「外部研修のコストを削減したい」「自社らしい研修を自分たちで作りたい」——その動機は正当です。しかし内製化を始めた企業の中には、「講師を立ててみたが受講者の評価が低い」「教材を作ったが1年で時代遅れになった」という失敗も少なくありません。内製化は「決断」より「準備」が9割です。

内製化は正しく進めれば大きなメリットをもたらします。しかし、準備不足のまま進めると「教える人材がいない」「教材を作ったが使いにくい」「品質が安定しない」という問題に直面します。この記事では、内製化を始める前に確認しておきたい5つのポイントを整理します。

確認すべきこと1:内製化の「目的」は何か

コスト削減だけを目的にした内製化は、失敗しやすいパターンです。コストを下げるためだけに質の低い研修を作ってしまうと、かえって育成効果が下がり、中長期的なコストが増える可能性があります。

内製化の目的として健全なのは「自社固有の知識・文化を伝える」「継続的に改善できる仕組みを持つ」「現場と連動した育成を実現する」などです。目的を明確にすることで、何を内製化し、何を外部に委託し続けるかの判断軸ができます。

内製化の前に——多くの組織が、すでに人材育成に困っている

厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和7年度)では、人材育成に関して何らかの問題があるとした事業所は80.1%にのぼります。8割です。しかも、この割合は前回より0.2ポイント上がっています。

内製化は、この問題を解く手段のひとつです。ただし「外部に頼めない事情がある」から内製化する場合、うまくいかないことが多いというのが実感です。教える人と、教材を作る時間と、教え方を学ぶ機会。この3つが要ります。順に確認していきます。

出典:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(令和8年7月31日公表)

確認すべきこと2:社内に「教えられる人材」がいるか

内製化で最初にぶつかる壁が、講師・ファシリテーターの不足です。業務知識があることと、人に教えられることは別のスキルです。

社内講師を育成するためには、「インストラクショナルデザイン(教え方の設計)」の知識や、ファシリテーションスキルが必要になります。内製化を始める前に、誰が教える役割を担えるかを確認し、必要であれば社内講師育成のプログラムを先に設計することが重要です。

確認すべきこと3:教材を「作る・更新する」体制があるか

内製化では、教材を自分たちで作る必要があります。スライド・テキスト・ワークシートの作成には思った以上の時間と専門性が必要です。

さらに、業務内容や組織の変化に合わせて教材を定期的に更新できる体制が必要です。「作ったきり更新されない教材」は現場との乖離が生まれ、研修の質を下げる原因になります。

内製化した教材を数年間更新しないまま使い続けた結果、「内容が現場と全然違う」という受講者の声が増え、一から作り直すことになるケースは珍しくありません。教材の「作成」と同じくらい「維持管理」の体制を最初から設計することが不可欠です。

確認すべきこと4:品質を「維持・改善」する仕組みがあるか

外部研修会社は品質管理の専門家でもあります。内製化した場合、品質管理を自社で行う必要があります。

受講者のフィードバック収集、講師の評価、プログラムの改善サイクルをどう設計するかを事前に考えておくことが重要です。仕組みがないと、研修の質は時間とともに低下していきます。

確認すべきこと5:「全て内製化」ではなく「ハイブリッド」も検討したか

内製化と外部委託は二者択一ではありません。自社固有の内容・文化伝達は内製化し、専門性が高い領域や管理職・幹部向けは外部を活用する、というハイブリッドが最も現実的です。

「全て内製化」にこだわると、社内リソースへの負荷が高まり、かえって育成の質が下がるリスクがあります。何を内製化し、何を外部に任せるかの「線引き」が、内製化成功のカギです。

まとめ:内製化は「手段」であり、育成の質が目的

内製化は育成コストの最適化や自社文化の継承に有効な手段です。しかし、準備なく始めると課題が山積します。5つのポイントを事前に確認することで、内製化の成功確率は大きく上がります。

今週の一歩として、社内で「自社の人が教えるべき内容」と「外部の専門家に任せるべき内容」を書き分けてみてください。その仕分けができれば、内製化の範囲が自然と明確になります。

ディレクターズコネクトでは、社内講師育成・教材開発・内製化の設計支援を行っています。「内製化を検討しているが、何から始めればいいか分からない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。