新入社員研修は充実している。管理職研修も実施している。しかし、入社3〜7年目の中堅社員への育成投資が手薄になっている——そんな組織は少なくありません。育成の「サンドイッチ」と呼ばれるこの構造こそ、多くの企業が抱える見落とされがちな盲点です。
「もう一人前だから」「現場で学べばいい」という前提のもと、中堅社員は育成の「空白地帯」に置かれがちです。しかしこの層の停滞は、組織全体のパフォーマンスに直結します。
なぜ中堅社員は「育成の空白地帯」になるのか
多くの組織で、育成の重点は新入社員と管理職に置かれています。新入社員は「育てなければ動けない」し、管理職は「成果に直結する」ため、投資の優先度が高くなります。
中堅社員は「ある程度仕事ができる」ため、手をかけなくても大丈夫という思い込みが生まれます。しかし実際には、この層が最も「次のステージへの壁」を感じやすいタイミングです。
基礎業務はできるようになった。でも、次に何を身につければいいか分からない。昇進の見通しも見えない。その停滞感が、離職や意欲低下につながっていきます。
自分で学ぶ人は、3人に1人しかいない
中堅層に「自分で学んでほしい」と期待する組織は多いのですが、統計を見ると前提が崩れます。
厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和7年度)では、自己啓発を行った労働者は35.5%。前回より1.3ポイント下がっています。3人に1人しか、自分から学んでいない。
さらに、計画的なOJTを実施した事業所は、正社員に対して60.6%。4割の事業所では、計画的な育成が行われていません。
会社が計画的に育てず、本人も自分では学ばない。この2つが重なるところに、中堅層が置かれています。伸び悩むのは、当然といえば当然です。
出典:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(令和8年7月31日公表)
中堅社員が「伸び悩む」3つの構造的な理由
▶ 理由1:成長の目標が曖昧になる
新人のときは「できないことをできるようにする」という明確なゴールがありました。しかし中堅になると、何を目指せばいいかが見えにくくなります。キャリアの方向性を組織として示せていない場合、個人の努力に任せるしかなくなります。
▶ 理由2:フィードバックの機会が減る
新人は上司や先輩から頻繁にフィードバックをもらえます。しかし中堅になると「もう分かるだろう」という空気が生まれ、フィードバックの機会が自然と減っていきます。
▶ 理由3:「挑戦できる仕事」が与えられない
業務に慣れると、安定したパフォーマンスを出せる仕事を任されがちになります。成長には適度なストレッチ(背伸び)が必要ですが、中堅には「安定した戦力」として使われ続けるケースが多くなります。
入社5年目前後の中堅層に「後輩のOJT担当」と「社内改善プロジェクトのリーダー」を同時に任せる——この2つを組み合わせると、停滞していた中堅層が再び動き出すことがよくあります。「教える役割」は、教わること以上に本人の成長を加速させるからです。
中堅社員の育成に効く3つのアプローチ
▶ キャリア面談を定期的に行う
本人のキャリア志向と、組織として期待する役割を擦り合わせる機会を意図的に設けます。「この会社で何ができるか」を一緒に考えることで、停滞感を打破できます。
▶ 「次のステージ」を意識させる育成機会を提供する
後輩の育成担当・プロジェクトリーダー・社内勉強会のファシリテーターなど、「教える・引っ張る」役割を経験させることで、新たな成長テーマが生まれます。
▶ 外部インプットで視野を広げる
社内だけで完結した仕事をしている中堅社員に、外部研修・異業種交流・ビジネス書読書会などで「外の世界」を見せることが、大きな刺激になります。
まとめ:中堅を育てる組織が、次の10年も強い
中堅社員は組織の「背骨」です。この層が活性化していれば、組織全体の底上げにつながります。逆に、中堅が停滞し続ける組織は、管理職候補も育たず、若手の将来イメージも描けなくなります。
「新入社員と管理職だけ育てていればいい」という育成戦略は、今すぐ見直すべきです。
今週の一歩として、入社3〜7年目の社員を一人思い浮かべ、その人が直近半年で「新しいことに挑戦できたか」を確認してみてください。答えがノーなら、そこが手を打つべきポイントです。
ディレクターズコネクトでは、中堅社員を含む全階層に対応した育成設計をご支援しています。「中堅の育成をどうすればいいか」とお悩みの方は、ぜひご相談ください。