「自分でやった方が早い」——その判断が積み重なると、組織はいつまでも拡大できません。日本企業の管理職の多くがプレイングマネジャーとして機能しており、「マネジャーがボトルネックになっている」という声は組織規模を問わず聞こえてきます。
現場仕事も担いながら部下を管理する「プレイングマネジャー」は、日本企業に非常に多いスタイルです。しかし、プレイングマネジャーのまま組織を拡大しようとすると、多くの場合どこかで限界が来ます。この記事では、その構造的な問題と、マネジャーが本来の役割に集中するための育成設計を考えます。
プレイングマネジャーが生み出す「3つの詰まり」
▶ 詰まり1:マネジャーの時間が足りなくなる
プレイヤーとしての業務が多いと、部下との1on1・チームの状況把握・育成・戦略的な思考に使える時間が物理的に不足します。マネジャーが多忙なほど、部下は放置され、育成は機能しなくなります。
▶ 詰まり2:部下が育たない
マネジャーが自分でやってしまうと、部下に仕事を任せる機会が生まれません。「任せられる仕事がない」「マネジャーが全部やってしまう」環境では、部下は成長の機会を失います。
▶ 詰まり3:組織のボトルネックになる
全ての意思決定・承認・対応がマネジャーを通過する必要があると、スピードが落ちます。マネジャーが不在・多忙なだけで組織が止まる構造は、スケールの障害になります。
詰まっているのは、あなたの会社だけではありません
パーソル総合研究所が管理職2,000名に行った調査では、5割以上が「業務量の増加」を課題として挙げています。組織全体の業務量が増えたと答えた人は46.3%。その背景として、人手不足を挙げた人が50.8%でした。
そして、こう続きます。37.5%が「部下育成が不十分」、56.2%が「後任者の不在」を課題として抱えている。
この2つは、プレイング業務に時間を取られた結果として出てくるものです。自分が動けば今期の数字は作れる。ただ、そのぶん育成が後回しになり、後任が育たない。翌年も自分が動くしかなくなります。ここが「詰まり」の正体です。
出典:パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」(全国・企業規模50人以上の企業の管理職2,000名への調査、2019年)
なぜプレイングマネジャーが生まれるのか
プレイングマネジャーが多い背景には、組織の構造的な問題があります。
- 人手不足でマネジャーにもプレイヤー業務をさせざるを得ない
- マネジメント専業を認めない文化・評価制度がある
- 「自分でやる方が成果が確実」というマネジャー自身の思い込み
- 部下に任せることへの不安・信頼不足
これらは個人の意識の問題だけでなく、組織設計・評価制度・人員配置の問題でもあります。
マネジャーの業務時間の内訳を実際に洗い出してみると、プレイヤー業務が大半を占め、マネジメント業務(育成・1on1・戦略検討)に使えている時間はごくわずか——そんな結果になる組織は少なくありません。この構造を放置したまま「部下を育てろ」と求めても、動きようがないのです。役割の再定義と委任スキルの育成が、先に必要になります。
マネジャーが「マネジメント」に集中できる組織をつくるために
▶ マネジャーの役割を明確に再定義する
「このポジションに期待すること」を明確にします。プレイヤーとしての成果と、マネジャーとしての成果(部下育成・チーム目標達成・組織文化形成)を分けて評価する仕組みをつくります。
▶ 「任せる力」を育てる
任せることが苦手なマネジャーには、何を・誰に・どう任せるかを設計する力が必要です。部下の強みと成長課題を理解し、適切なアサインメントをする「委任スキル」はトレーニングで育てられます。
▶ 部下の自律性を育てる
任せてもうまくいかないのは、部下の自律性が育っていないからでもあります。部下が自分で考えて動ける状態をつくることが、マネジャーを解放する最短ルートです。
まとめ:マネジャーの「手放し」が組織の成長を加速する
プレイングマネジャーの問題は、個人の能力や意欲の問題ではなく、組織設計と育成の問題です。マネジャーが本来のマネジメント機能に集中できる環境をつくることが、組織全体のパフォーマンスを底上げします。
今週の一歩として、自社の管理職に「今週の業務時間のうち、部下育成や戦略検討に使った時間は何%か」を聞いてみてください。その数字が現状の課題規模を示しています。
ディレクターズコネクトにぜひご相談ください。マネジメント育成と組織設計の両面からご支援します。