上司が原因で部下が辞める——その一人を採り直し、育て直すためのコストを積み上げると、決して小さな額にはなりません。にもかかわらず、多くの組織で管理職育成は「後回し」のままです。「優秀だから管理職に昇進させた」その後、育成はどうなっていますか?
プレイヤーとして優秀だった人が、マネジャーとしても優秀であるとは限りません。この記事では、管理職育成を後回しにし続けることで組織に何が起きるかを整理し、今取り組むべき理由を考えます。
「なんとなく管理職」が増え続ける組織の実態
管理職育成が後回しになる背景には、いくつかの要因があります。
▶ 昇進=育成完了という思い込み
現場で成果を出してきたから、管理職としてのスキルも自然に身につくだろう——そんな期待が根強く残っています。しかし、チームを動かし、部下を育て、経営方針を現場に落とし込む力は、プレイヤー経験だけでは培われません。
▶ 管理職向け研修の優先度が低い
新入社員研修や若手向けプログラムは整備されていても、管理職向けの継続的な育成機会は「予算がない」「忙しい」を理由に後回しになりがちです。
▶ 管理職自身が「自分は育成が必要」と思っていない
昇進したことで「もう学ばなくていい」と感じる管理職も少なくありません。育成文化が組織に根付いていなければ、自発的な学びも起きません。
後回しの結果は、数字に出ています
パーソル総合研究所の調査(管理職2,000名)では、56.2%が「後任者の不在」を課題として挙げています。半数を超える管理職が、自分の次がいない状態で仕事をしていることになります。
同じ調査で37.5%が「部下育成が不十分」と答えています。育成が回っていないという自覚はある。ただ、業務量が増える中で(組織の業務量が増えたとの回答46.3%、人手不足50.8%)、手が回らない。
「後回しにしている」というより、「後回しにせざるを得ない構造がある」と見たほうが正確です。だとすれば、本人の意識に訴えても変わりません。仕組みのほうを変える必要があります。
出典:パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」(全国・企業規模50人以上の企業の管理職2,000名への調査、2019年)
管理職育成を怠ると何が起きるか
管理職の育成が止まった組織では、さまざまな問題が連鎖的に発生します。
- 部下の離職率が上がる
マネジメント力のない上司のもとでは、部下は成長実感を持てず、評価にも不満を持ちやすくなります。「上司が原因」の離職は、採用コストの増大に直結します。
- 現場の生産性が上がらない
仕事を抱え込み、部下に適切に任せられない管理職が増えると、チーム全体のパフォーマンスが低下します。本来は現場を動かすべき管理職が、プレイヤーとしてしか機能しなくなります。
- 経営方針が現場に届かない
経営の意図を理解し、自チームに翻訳して伝える力がなければ、「言われたことをやるだけ」の組織になります。変化への対応力も低下します。
管理職向けのマネジメント研修を導入した組織で、その後に担当チームの離職率が下がっていくというのは、珍しい話ではありません。上司の関わり方が変われば、部下が辞める理由のひとつが消えるからです。育成への投資は、定着コストの削減という形で返ってきます。
管理職育成を「仕組み」として設計するために
管理職育成を後回しにしない組織は、育成を「個人の努力」ではなく「組織の仕組み」として設計しています。
▶ 昇進時の育成プログラムを必須化する
管理職になった初年度に、マネジメントの基礎を学ぶ機会を全員に提供します。OJTだけでなく、体系的な知識と実践の場を用意することが重要です。
▶ 定期的なマネジメント力の振り返り機会を設ける
年に一度でも、管理職が自身のマネジメントを振り返り、課題を認識できる場をつくります。360度フィードバックや1on1の導入も有効です。
▶ 管理職同士が学び合う場をつくる
孤独になりがちな管理職が、同じ立場の仲間と課題を共有し、学び合える場は大きな価値を持ちます。外部研修の活用も選択肢のひとつです。
まとめ:管理職の質が、組織の天井を決める
どんなに優れた戦略があっても、それを現場で実行するのは管理職です。管理職の質が組織全体のパフォーマンスを左右するといっても過言ではありません。
「後でやる」と思っているうちに、離職・低生産性・組織の硬直化という形でコストが積み上がっていきます。
まず今週、自社の管理職のうち昇進後に体系的なマネジメント研修を受けていない人が何人いるかを数えてみてください。その人数がそのまま、組織の潜在リスクの規模です。次のステップとして、最も優先度の高い管理職候補を一人選び、来月の育成計画を一緒に考える30分を確保してみましょう。
ディレクターズコネクトでは、管理職育成プログラムの設計相談をお受けしています。「管理職育成をどこから始めればいいか分からない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。