「新入社員研修、若手研修、管理職研修と、階層ごとに研修を実施しています」——その言葉の裏で、「でも正直、効果が出ているかどうか分からない」と感じていませんか。階層別研修を整備することと、人材育成が機能していることは、全く別の話です。

階層別研修は、体系的な育成の「形」として重要です。しかし「やっている」ことと「効果が出ている」ことは別の話。この記事では、階層別研修が形骸化する罠と、目的から逆算した設計のポイントを解説します。

階層別研修が形骸化する3つの罠

▶ 罠1:「前年踏襲」で目的が更新されていない

毎年同じプログラムを同じ時期に実施している組織は少なくありません。しかし、組織の課題・戦略・人材構成は毎年変わります。昨年の正解が今年も正解とは限りません。

▶ 罠2:研修が「通過儀礼」になっている

「この階層になったらこの研修を受けるもの」という認識が定着すると、研修は学びの場ではなくイベントになります。受講者は「受けなければならないもの」として参加し、終わったことで満足してしまいます。

▶ 罠3:研修内容が現場の課題とズレている

汎用的な内容の研修は、どの組織にも当てはまるように設計されているため、自社の具体的な課題には響きにくい面があります。「いい話だったけど、自分の仕事とどう関係するか分からない」という受講者の声はその典型です。

「やっている」だけなら、多数派です

厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和7年度)によれば、人材育成に関して何らかの問題があるとした事業所は80.1%にのぼります。しかもこの割合は、前回より0.2ポイント上がっています。

多くの組織が階層別研修を実施しています。そのうえで8割が「問題がある」と答えている。実施しているかどうかは、もはや差にならないということです。

同じ調査で、教育訓練費用を支出した企業は54.4%、労働者1人あたりのOFF-JT費用は年間2.0万円でした。予算の多寡でもありません。差がつくのは、何のためにやるかが決まっているかどうかです。

出典:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(令和8年7月31日公表)

目的から逆算した階層別研修の設計ステップ

階層別研修を機能させるためには、「この階層にはこの研修」という発想を捨て、目的から逆算して設計することが必要です。

▶ ステップ1:各階層に「何を期待しているか」を言語化する

新入社員には何ができるようになってほしいか。若手には。管理職には。それぞれの階層に対する期待行動を具体的に定義します。「主体的に動ける」「チームを巻き込める」など、観察・評価できる形で表現します。

▶ ステップ2:期待行動と現状のギャップを整理する

期待する行動が取れていない理由を分析します。知識不足なのか、スキル不足なのか、マインドセットの問題なのか、環境の問題なのか。ギャップの種類によって、研修の内容・形式が変わります。

▶ ステップ3:研修後の変化を測定する設計を組み込む

何が変われば「研修が機能した」と言えるかを事前に定義します。行動変容を上司が観察する仕組み、受講者自身の振り返りシートなど、効果測定の仕組みをセットで設計します。

「前年踏襲型」から「今年の組織課題から逆算した設計」に切り替えるだけで、受講者の満足度や「職場で実践できた」という声は大きく変わります。

階層別研修を「点」から「線」の育成へ

階層ごとの研修が連動していることも重要です。若手研修で学んだことが管理職研修で発展する、新入社員研修で触れたテーマが中堅研修で深まる——そうした「縦のつながり」が設計されていると、育成の一貫性が生まれます。

また、研修単体ではなくOJTや1on1、評価制度とも連動させることで、研修の学びが日常業務に組み込まれていきます。

まとめ:「やっている」から「機能している」へ

階層別研修は、整備するだけでは不十分です。目的が明確で、現場課題と連動し、研修後のフォローが設計されて初めて、育成として機能します。

「毎年同じ研修をしているが、何かが変わっている気がしない」という感覚があるなら、設計を見直すタイミングです。

今週の一歩として、今年実施予定の研修を一つ選び、「この研修の受講後、受講者にどんな行動をとってほしいか」を3つだけ書き出してみてください。それが目的から逆算した設計の第一歩です。

ディレクターズコネクトでは、階層別研修の設計見直しから実施・効果測定まで一貫してご支援しています。現状の研修体系に課題を感じている方は、ぜひご相談ください。