1on1ミーティングを導入している企業が増えています。しかし「導入した」と「機能している」は全く別の話です。実際に1on1を実施している組織でも、「部下が本音を話してくれない」「雑談で終わる」「マネジャーが時間を惜しむようになった」という声が多く聞かれます。形だけの1on1は、むしろ「対話がある組織」という幻想を生み出してしまう危険さえあります。

1on1は、適切に設計・運用されれば、部下の成長を加速し、マネジャーと部下の信頼関係を深める強力な手段になります。しかし多くの組織で「やっているだけ」の状態になっています。なぜ形骸化するのか、そして何が必要なのかを整理します。

1on1が形骸化する3つの理由

▶ 理由1:目的が共有されていない

「なぜ1on1をするのか」がマネジャーにも部下にも明確でないまま導入されると、「とりあえず30分話す場」になります。業務報告なのか、成長支援なのか、メンタルケアなのか——目的を明確にしないと、何をすればいいか分からなくなります。

▶ 理由2:マネジャーが「話す側」になっている

1on1の主役は部下です。しかし多くのマネジャーは、無意識に自分が話す時間が長くなりがちです。指示・アドバイス・報告確認で終わってしまうと、部下が「話す場」にはなりません。

▶ 理由3:心理的安全性が確保されていない

「この話をしても大丈夫か」という不安が部下にあると、表面的な話しか出てきません。普段の関係性や、話した内容がどう扱われるかの信頼感が、1on1の質を左右します。

「話す割合」の認識が、上司と部下でずれている

パーソル総合研究所が3,000名に行った調査に、形骸化の正体がよく表れた数字があります。

1on1で誰が多く話しているかを、上司と部下の双方に聞いたものです。

- 上司側:「部下のほうが多く話している」42.5%/「上司のほうが多い」36.2%

- 部下側:「上司のほうが多く話している」36.6%/「部下のほうが多い」31.4%

上司は部下に話させているつもりで、部下は聞かされていると感じている。ここがずれたまま回数だけ重ねると、形だけの面談になります。

同じ調査では、直近半年で1on1を経験した人は55.7%、そのうち「不満」または「どちらともいえない」と答えた部下が47.3%でした。半数近くが、手応えを感じていません。

なお、部下の成長度がいちばん高かったのは「月2〜3回以上」かつ「1回30分以上1時間未満」の組み合わせでした。月1回30分では、足りていない可能性があります。

出典:パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(2025年2月27日発表。直近半年間で1on1を行った正社員20〜59歳3,000名への調査、2024年6月実施)

機能する1on1に必要な3つの要素

▶ 要素1:アジェンダは部下が決める

1on1で話すテーマは、基本的に部下が準備します。「今週気になっていること」「最近の学び」「上司に相談したいこと」など、部下が主体的に持ち込む場として設計します。マネジャーは聴く側に徹することが基本です。

▶ 要素2:マネジャーがコーチングスキルを持つ

良い問いを立て、答えを引き出し、気づきをサポートするコーチングの姿勢が、1on1の質を高めます。アドバイスを押しつけるのではなく、「どうしたいか」「何が障壁か」を一緒に考えるスタイルが求められます。

▶ 要素3:継続性と積み上げを大切にする

1on1は1回で成果が出るものではありません。定期的に続け、前回の話を踏まえて展開していくことで、部下の成長ストーリーが積み重なっていきます。頻度・時間・場所を固定化することで、習慣として定着させます。

1on1がうまく回り始める組織に共通するのは、「1on1シート」のようなツールと、マネジャー側のコーチングスキルをセットで整えている点です。ツールだけを導入しても、聴く技術が伴わなければ様式が埋まるだけで対話は深まりません。両方を同時に整備することが、1on1定着のポイントです。

形骸化した1on1を、立て直す順番

すでに形だけになっている1on1を、いきなり「ちゃんとやろう」と言っても戻りません。順番があります。

1. いったん止める。回数を減らすのではなく、一度止めます。「なんとなく続いている」状態が一番たちが悪く、止めると「何のためにやっていたのか」が全員に問われます

2. 何のための時間かを、上司と部下の両方に聞く。ここがずれていることがほとんどです。上司は「進捗確認」、部下は「相談の場」と思っている、という食い違いはよくあります

3. 目的を1つに決めて、書き出す。「部下の困りごとを早く拾う」でも「キャリアの話をする」でもいい。ただし1つに絞ります。全部やろうとすると、また進捗確認に戻ります

4. 頻度を落とす。週1回で形骸化しているなら、隔週や月1回に落とします。回数より、1回の中身です

5. 上司側の準備を減らす。準備が重いと続きません。前回何を話したかだけ見返せば始められる形にします

6. 3か月やって、また聞く。「この時間は役に立っているか」を部下に直接聞きます。役に立っていなければ、目的の設定が間違っています

止めずに立て直そうとすると、たいてい失敗します。いま形骸化しているということは、続けること自体が目的になっているということなので、一度切らないと目的を問い直せません。

1on1をマネジャー育成と組み合わせる

1on1を機能させるためには、マネジャー側のスキル育成が不可欠です。「1on1をやれ」と言うだけでは、質は上がりません。

  • コーチング・傾聴の基礎研修
  • 1on1の実践ロールプレイと相互フィードバック
  • 1on1シートの活用(振り返り・次回アジェンダの記録)
  • 上位マネジャーによる1on1の質のフォロー

これらをセットで整備することで、1on1は「形式」から「文化」へと変わっていきます。

まとめ:1on1は「ツール」ではなく「マネジメントの本質」

1on1が形骸化する組織では、マネジメントそのものが機能していないサインであることが多い。ツールを導入するだけでなく、マネジャーの関わり方と育成スキルを合わせて整備することが、1on1を機能させる鍵です。

今週の一歩として、自社のマネジャーに「直近の1on1で部下が話した割合は何%か」を一人だけ聞いてみてください。その答えが、1on1の現状を正確に教えてくれます。

ディレクターズコネクトでは、1on1の導入・定着支援やマネジャー育成プログラムを提供しています。「1on1がうまくいっていない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。