「受講者のモチベーションが低くて困る」「スマホを見ていたり上の空だったりする」——そう感じたとき、原因を「受講者の問題」にしていませんか。しかし、やる気のない受講者のほとんどは、組織や研修設計が生み出しています。受講者を変えようとする前に、設計側を変えることが先決です。

しかし、受講者の低いモチベーションを「個人の問題」として片づけてしまうと、本質を見誤ります。やる気のない受講者を生み出しているのは、実は組織や研修の設計側にある場合がほとんどです。

受講者がやる気を失う5つの構造的な理由

▶ 理由1:なぜ受けるのか説明されていない

「今年の研修だから参加してください」という案内だけでは、受講者は「なぜ自分がこれを学ぶ必要があるのか」を理解できません。学ぶ意味が見えなければ、参加しても受け身になります。

▶ 理由2:内容が自分の仕事と関係ない

汎用的な研修内容は、自社の課題や受講者の実際の業務と乖離していることがあります。「自分ごと」に感じられない研修は、どれだけ内容が良くても頭に入りません。

▶ 理由3:研修が「評価されない行動」になっている

研修で学んで行動を変えようとしても、上司が評価しない・組織がサポートしない環境では、努力が報われません。「研修で頑張っても何も変わらない」という経験が積み重なると、学習意欲は下がります。

▶ 理由4:忙しすぎて研修に集中できない

「研修中も業務連絡が来る」「研修の前後に仕事が山積みになる」という状況では、研修に集中しようとしても難しい。組織が研修を「業務より優先度の低いもの」として扱っていることが伝わってしまっています。

▶ 理由5:研修のあとに何も変わらない体験の蓄積

過去に「研修を受けたが、現場では何も変わらなかった」という経験を繰り返していると、「どうせ何も変わらない」という諦めが生まれます。これが最も根深い問題です。

研究でも、原因は「研修の外」にあるとされています

研修で学んだことが職場で実践されるかどうか(転移)を扱った研究では、研修そのものの質より、職場の環境や上司の関わりのほうが大きく効くことが繰り返し示されています。Baldwin & Ford(1988)が整理し、Blume らが89の研究をまとめたメタ分析(2010)でも、上司の支援や試す機会があるかどうかが転移を左右するとされました。

受講者のやる気も、同じ構造の中にあります。戻っても試す余地がない、上司が関心を示さない——そう分かっている人が、前のめりで受けるほうが不自然です。

出典:Baldwin, T. T., & Ford, J. K. (1988). Personnel Psychology, 41(1), 63-105./Blume, B. D. ほか (2010). Journal of Management, 36(4), 1065-1105.

学習意欲を引き出す研修設計の3つのポイント

▶ ポイント1:「なぜあなたがこれを学ぶのか」を事前に伝える

研修案内の段階で、「この研修の目的」「受講後に何が変わるか」「自分のキャリアにどうつながるか」を丁寧に伝えます。上司から直接伝えてもらうことで、重要度と期待感が高まります。

▶ ポイント2:自社の課題・受講者の業務に引き寄せた設計にする

ケーススタディや演習に自社の事例・現場の課題を取り入れることで、「自分の話だ」という感覚が生まれます。外部研修の場合も、事前に現場情報を提供して内容を調整することが有効です。

たとえば管理職研修の事前課題として「自チームで今最も困っている課題を一つ持ってきてもらう」という仕掛けを置くだけで、研修中の発言量は大きく変わります。扱うテーマが「一般論」から「自分の話」になるだけで、動機は変わるのです。

▶ ポイント3:研修後の「実践と承認」の仕組みを整える

研修で学んだことを試す場を用意し、上司がその行動を承認・フィードバックする仕組みをつくります。「やってみたら認められた」という経験が、次の学習意欲につながります。

まとめ:やる気のない受講者は、設計の失敗のサイン

受講者のモチベーションが低いことを個人の問題にしてしまうと、何も変わりません。設計側が変われば、受講者の反応は変わります。

「受講者のやる気がない」という課題を感じているなら、研修前・研修中・研修後の設計を見直す機会です。

今週の一歩として、次回の研修案内文を見直し、「なぜあなたがこの研修を受けるのか」という一文を追加してみてください。それだけで、受講者の事前の心理状態が変わります。

ディレクターズコネクトでは、受講者の主体性を引き出す研修設計をご支援しています。「研修の効果が出ない」とお困りの方は、ぜひご相談ください。