採用担当と育成担当が別の部署にいて、ほとんど連携していない——そんな組織は少なくありません。しかしこの分断のコストは想像以上に大きいのです。早期離職の理由としてよく挙がる「入社前に聞いていた話と、実際の仕事が違った」という声は、採用と育成の設計がズレていることの表れでもあります。
採用と育成が「連動している」組織が、なぜ強いのかを考えます。
採用と育成が分断している組織で起きること
▶ 採用したが「育成が追いつかない」人材が増える
採用段階で「ポテンシャル採用」をしているのに、入社後の育成プログラムがポテンシャルを伸ばす設計になっていなければ、採用と育成が噛み合いません。「この人に何を期待して採ったのか」が現場に伝わっていないケースが典型です。
▶ 離職につながるギャップが生まれる
採用時に伝えた「仕事内容」「成長機会」「社風」と、実際の入社後の体験が乖離していると、早期離職の原因になります。採用メッセージと育成の現実を一致させる視点が必要です。
▶ 採用コストが育成投資に活かされない
優秀な人材を採用してもすぐに辞められれば、採用にかけたコストは回収できません。採用後の定着・成長を設計することで、採用投資の回収期間を短縮できます。
国の資料も、経営戦略と人材戦略の連動を求めています
経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」(通称・人材版伊藤レポート、2020年9月30日公表)は、事業ポートフォリオの変化を見据えた人材ポートフォリオの構築を、経営の課題として挙げています。
人材ポートフォリオという言い方は硬いのですが、中身は単純です。これからどういう事業をやるのか。そこにどういう人が何人要るのか。足りない分を、採用で埋めるのか育成で埋めるのか。この3つを続けて考えるということです。
採用と育成が別々になっている組織は、この3つ目で分かれてしまっています。採用の担当は「採れば埋まる」と考え、育成の担当は「今いる人を伸ばす」と考える。どちらも間違ってはいませんが、合算されていません。
出典:経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書(人材版伊藤レポート)」2020年9月30日(座長:伊藤邦雄)
採用と育成を連動させている組織がやっていること
▶ 採用基準を「育成設計」から逆算する
「入社後にどう育てるか」を先に設計し、そこから「どんな人を採るべきか」を定義します。育成でカバーできるスキルギャップと、採用時点で持っていてほしい素養を区別することで、採用基準が明確になります。
▶ 採用担当が育成の現場を知っている
採用担当者が「入社後に何を学ぶか」「現場でどんな課題に直面するか」を知ることで、候補者に正確な情報を伝えられます。ミスマッチが減り、入社後の定着率が上がります。
▶ 入社後のオンボーディングを採用の延長として設計する
採用から入社後3〜6ヶ月を「採用の完結」として一体的に設計します。内定から入社後の初期育成までを連続したプロセスとして管理することで、早期離職を防ぎ、戦力化を早めます。
採用担当者が入社後の研修現場に同席し、「自分が採用した人がどんな壁に当たっているか」を定期的に確認する——この仕組みを持つ組織は、そこで得た情報を採用メッセージと選考基準に反映できます。採用と育成の情報が「循環」し始めると、入社前の期待と入社後の現実のズレは小さくなっていきます。
「採用ブランド」と「育成の質」は連動する
優秀な人材を採用し続けるためには、「この会社に入ると成長できる」というブランドが必要です。そのブランドは、実際の育成の質が高いことで初めて構築されます。
採用と育成が連動している組織は、「入社後に成長できる」という実績をつくり、それが採用の競争力になるという好循環を生んでいます。
まとめ:採用と育成は「同じ問いへの答え」
採用も育成も、突き詰めれば「どんな人材が自社で活躍できるか」という同じ問いへの答えです。この問いを共有し、連動して動くことで、両者の効果は掛け算になります。
「採用はしているが定着しない」「育成しているが成果が出ない」という課題の多くは、この連動の欠如に原因があります。
今週の一歩として、採用担当者と育成担当者が同席する30分の対話の場を設けてみてください。「採用した人材がどんな壁にぶつかっているか」を共有するだけで、両者の連携が始まります。
ディレクターズコネクトでは、採用と育成を連動させた人材戦略の設計をご支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。