リモートワーク導入後に「若手の育成がうまくいかなくなった」と感じる企業が増えています。オフィスにいれば自然に起きていたことが、画面越しでは起きない——多くの管理職が、同じ手応えのなさを口にします。しかし、これは「リモートワークだと育てられない」という意味ではありません。

確かに、オフィスで自然に発生していた育成の機会は、リモート環境では意図的につくらなければ起きません。しかしそれは、「リモートワークだと育てられない」ということではありません。育て方を変える必要があるということです。

リモート環境で失われた「偶発的な学習機会」

オフィスで働いていたとき、若手は多くのことを「見ること」「聞こえてくること」から学んでいました。

  • 先輩が電話対応する声を聞いて、話し方を学ぶ
  • 上司がどんな優先順位で仕事を進めているかを見て、段取りを学ぶ
  • 会議に同席して、経営や上位職の思考プロセスに触れる
  • 廊下ですれ違いざまに「あの件どうなった?」と声をかけてもらう

これらは意図的に設計されたものではなく、物理的な同居から自然発生していた学習機会です。リモートワークでは、これらが根こそぎ失われます。

リモート環境での育成を機能させる4つのアプローチ

▶ アプローチ1:「偶発的な学び」を意図的に設計する

雑談が生まれるオンライン場(バーチャルオフィス、ランダムな1on1のマッチング、業務外の気軽なチャンネルなど)を意図的につくります。自然には起きないことを、仕組みとして設計します。

▶ アプローチ2:OJTの「見える化」を徹底する

リモート環境では、仕事のプロセスが見えにくくなります。上司・先輩が「なぜこう判断したか」「どんな観点で考えたか」を言語化してSlackやドキュメントに残す習慣をつくることで、若手が学べる情報が増えます。

▶ アプローチ3:定期的なフィードバックの機会を増やす

オフィスでは自然に発生していた「ちょっとしたフィードバック」が、リモートでは発生しにくくなります。週次の1on1・月次の振り返りミーティングなど、フィードバックの機会を意図的に増やします。

▶ アプローチ4:オンライン研修を「参加型」に設計する

リモート環境での研修は、一方通行の講義形式では学びが薄くなります。グループワーク・ブレイクアウトルーム・チャットでの意見共有など、参加者が能動的に動く設計が必要です。

たとえばフルリモート環境で「上司が毎日5分、その日の仕事で考えたことをSlackに投稿する」という習慣を置くと、それは若手にとって「上司の思考プロセスが読める教材」になります。OJTの「見える化」が、失われた偶発的学習の代わりを果たすわけです。

リモート環境での育成に必要な「マネジャーの意識転換」

リモート時代の育成で最も重要なのは、マネジャーの意識転換です。

「見ていれば育つ」から「意図的に関わる」へ。「気づいたら声をかける」から「仕組みで定期接触を確保する」へ。リモート環境では、育成はより能動的な行為になります。

マネジャーが「自分が積極的に関わらなければ、部下に何も起きない」と理解し、行動を変えることが、リモート育成の鍵です。

まとめ:リモートワークは育成の「制約」ではなく「設計の問い直し」

リモートワークによって「育てにくくなった」のではなく、「これまでの育て方が通用しなくなった」のです。育成の設計を意図的に見直すことで、リモート環境でも人は育ちます。

今週の一歩として、自チームの若手に「最近、仕事を通じて何を学んだか」を1on1で聞いてみてください。「学べていない」という答えが返ってきたなら、それが育成設計を変えるシグナルです。

ディレクターズコネクトでは、リモート・ハイブリッド環境に対応した育成設計をご支援しています。「リモートになってから人が育たない」とお感じの方は、ぜひご相談ください。