「DXを進めたいが、うまくいかない」。建設業の方からいただくご相談です。
話を伺っていくと、中身はツールの話ではないことがほとんどです。施工管理アプリは入れた。クラウドも契約した。それでも現場が変わらない。詰まっているのは、たいてい教える人と、学ぶ時間と、使う人のほうです。
この記事では、建設業のDXの課題を人材育成の側から整理します。以下の数値は、国土交通省 不動産・建設経済局建設業課「改正建設業法について」(令和6年12月)によります。
教える人が減り、教わる人も足りない
建設業の就業者は、平成9年の685万人から令和5年には483万人まで減りました。30年弱で200万人です。
構成も偏っています。55歳以上が36.6%、29歳以下は11.6%。教える側が抜けていく速さに対して、教わる側が足りていません。
ここで効いてくるのは、人数そのものよりも時間の問題です。「そのうち引き継ぐ」「いずれ教える」という前提は、教える側があと何年いるかという見通しの上に成り立っています。その見通しが短くなると、同じ言葉でも意味が変わります。
2024年4月から、時間で埋めることができなくなった
もう一つ、前提が変わったことがあります。
2024年4月から、時間外労働の罰則付き上限規制が建設業にも適用されています。これまで残業や休日でしのいでいた分を、就業時間の中に収めなければなりません。
ここが見落とされがちなところです。上限規制は工期や人繰りの話として語られますが、育成計画にも同じだけ効いています。「繁忙期を越えたらまとめて研修を」という組み方は、越えた先にも時間がないので、実行できません。
二つが重なると、従来のやり方が成立しなくなる
この二つは、別々に見ると「人手不足」と「働き方改革」という、よくある話です。重ねると意味が変わります。
▶ 教える側は、待ってくれる年数が短くなった
▶ 学ぶ側は、まとまった時間を取れなくなった
「そのうち、まとめて」が、両側から成立しなくなったということです。従来の育成は、どちらか一方には耐えられました。両方が同時に来ると、やり方そのものを組み替えるしかありません。
ツールを入れても現場が変わらないのは、この組み替えをしないまま、道具だけが増えたからだと考えています。
何から手をつけるか
組み替えといっても、大きな計画を立て直す話ではありません。実際に動いた順に書きます。
▶ 短く、繰り返す形にする
一日の研修を一回やるより、30分を何回かに分けるほうが、現場では実行できます。朝礼後の時間や、雨天で作業が止まった時間を使う形も取れます。まとまった時間を前提にしないのが出発点です。
▶ 書類のほうから入る
施工管理の方が時間を取られているのは、多くの場合、現場そのものではなく書類です。写真の整理、日報、施主向けの報告、打ち合わせの記録。ここに生成AIを入れると、効果が本人にすぐ分かります。「何が楽になるのか」が自分の仕事で分かると、その先は本人から広がります。
▶ ベテランの判断を、聞き出して形にする
図面の見立て、天候による組み替え、危ないと感じる勘所。本人にとって当たり前すぎて、言葉になっていません。これはツールでは残せません。聞き出して形にする作業が要ります。時間がかかるので、人がいるうちにしか着手できません。
▶ 進める人を、現場が分かる人にする
情報システムの担当が旗を振っても現場が動かない、現場に任せると本業で手が回らない。どちらか一方に寄せるより、現場が分かる人にデジタルの言葉を渡すほうが早いことが多くあります。
まとめ
建設業のDXの課題は、ツールの選定ではなく、育成の前提が二重に崩れたところにあります。教える側の年数と、学ぶ側の時間。この二つが同時に短くなったことが、従来のやり方を成立しなくさせました。
裏を返すと、打ち手は人材育成の側にあります。道具は、その組み替えができてから効いてきます。
▶ 今週の一歩
自社で「そのうち引き継ぐ」と言われている技術を、一つだけ書き出してみてください。誰が持っていて、あと何年在籍するのか。そこに具体的な年数が入ると、それが計画になるか、間に合わないかが見えます。
建設業での具体的な進め方は、建設業の人材育成・DX研修にまとめています。ぜひお気軽にご相談ください。